重力場におけるヒトの直立と咬合 −その病態への演繹解析−


Relationship between Human Standing Posture and Occlusion in the Gravitational Field

Toshiyuki Nakatani,Yasunori Hori,Mamoru Ono,Tamao Kinugawa,
Kyoichi Kuroiwa,Toshikazu Nishimura,Fan Minsuku and Masuto Hayashi

Abstraet: For dentists,the mandibular position is nothing but the occlusal position,
Which is the result of the relationship between the hyoid bone and the cervical vertebrae
position.The center of gravity of the craniomandibular cervical triangle(the occlusal
triangle),Which consists of the last molar,the mastoid process and the 7th cervical bone,
loses its balance causing a distortion, that leads to an abnormal condition.Biomechanics
of this condition were deductively analyzed by our group for the first time in history.It
was comfirmed that the aforementioned imbalance can be successfully treated achieving
remission of the symptoms or alleviating them to say nothing of the condyle and the
occlusal position・ The influence of the mandibular position ongeneral posture was
analyzed by investigating the imbalance of the standing axis and the gravitational
distortion of the occlusal triangle.

KeyWords: gravitational field,center of gravitational triangle,mandibular position


は じ め に

 歯科医師にとって下顎位とは永遠の命題である。
なぜなら下顎位とはまさに咬合位に他ならないからである。また、咬合位とは舌骨を介して頚椎位
といえる。最後臼歯と乳様突起そして頸稚7番とで構成される顎頭蓋頸椎三角(以下咬合三角と称
す)の重心が、重力場の平衡を失って重心偏差をおこし常態から病態へ移行するというバイオメカ
ニクスが、人類史上始めて著者等のグループによって、演繹解析された。治療方法としては、咬合
三角に場の平衡を与えてやれば、顎関節、咬合位はもちろん全身疾患までもが修復改善されること
が確認された。スフィンクスの第一間「朝に四本足、昼に二本足、そして夕に三本足の動物はなに
か?」との問いに若きオイデイプスはすかさず「それはヒトです。」と答え難を逃れることができ
た。
もし、スフィンクスが「四本足が三本足に至る過程を演繹解析せよ」と問うたならば、はたして答
える事ができたであろうか。著者等は体幹重力軸における場の平衡と、咬合三角の重心偏差におけ
る場の平衡の機能的な乱れから、スフィンクスの第二問を解析できたのでここに披露し、ひろく世
に知見を問う事としたい。


方  法

 人体における4つの湾曲(頚椎前湾、胸碓後湾、腰稚前湾そして咬合曲面)の曲率をとっていった
ところ、曲率円の中心が一点に集中した。ということは、4つの湾曲の正体はすべて『円』である
ことがわかった。



 Fig.1のように、アランの円(咬合曲面と乳様突起上端を結ぶ円で、その大きさは、頸稚の円と
同じである。従来のスピーのカーブより大きく、そのコンセプトもまったく異なる。以下アランの
円と称す)と頸碓の円、アランの円と胸稚の円の交点をそれぞれP2、P1とし、頸稚の円と胸椎の円
の接点をP3とする。


 また、頸稚の円と胸椎の円の接点をP3、頸椎の円と腰椎の円との接点をそれぞれP4、P5とする。
すると、P2、P3、P5は直線上に並び、その直線は、なんと頭位中心軸lと一致する。そして、P1
P2、P3を結ぶ。さらにP3、P4、P5を結び、△P1P2P3、△P3P4P5と△O1O2O3の重心を考える。
Fig.2のうち、紙面の都合で直接咬合に関係する△P1P2P3の重心P−G1(咬合と頚椎との重心)
を中心に解析する。
 P2は、アランの円と頸稚の円との結合点であり、P3は頚椎の終点(胸椎の円との接点)だか
ら、この2点を固定し、咬合点(アランの円と言う咬合円と胸椎の円との接合点)であるP1だけを
移動させる。
 すると、P1はアランの円上の点だから、アランの円全体がP2を中心に回転すると考えることが
できる。
 すなわち、アランの円の中心0Oは、図の破線で示した円周上(P2を中心に半径r0=r1の円周上)を
移動する。
 また、P1はアランの円と胸椎の円との交点でもあるから、P1はO2を中心に半径r2の円周上を移動
する。
 ここではじめて、重心P−G1の軌跡を求めることができる。


結 果 と 考 察

以上の結果より、咬合点P1(ポステリアーストップ)は、胸椎の円O2の円環に沿って移動し、
P2(乳様突起部)、P3(頸胸移行部)とでできる咬合三角の重心PG1は、胸椎の円O2の半径r2の三
分の一の半径で構成される重心円OG1の円環に沿って移動する。PG1は常態では第三頸椎にあり、イ
グルーのトップウォールに相当するという重要な役目を担っている。PG1がOG1の円環に治って後下
方に変化(移動)したときは、頸稚カーブはミリタリーネックやスワンネックとなる(extension)。
 これは臨床的にはどのような状態であるかというと、例えば、下顎の臼歯が失われ遊離端で長期
間放置されていると、上顎の臼歯が一見真下に挺出しているのが視診される。]線診断的にも上顎
骨が下垂しているのが判る。しかし、これはあくまで見掛け上であって、そのとき、第三頸椎を後
下方へ変化させる応力の集中の結果、頸稚カーブはうしなわれ、代償作用として腰椎カーブもうし
なわれる。もちろん、頸稚のdistortionは、初期には片側に起こり、その後両側性に移行する。
これは、]線セファログラムコレクションや整形外科的スクリーニングテストそしてスタディモデ
ルによっても明らかにできる。
 また、咬合三角の重心PG1が前上方に変化したときは、頸碓カーブは過剰前湾となる(flexion)。
頸稚の過剰前湾のヒトは、若年者では病的であることが若干あるが、概ね咬合高径が低く下顎骨が
前方変位している義歯装着者で、比較的健康である高齢者が多い。杖をついた三本足で過剰前湾の
高齢者は必ずしも病的とは言えない。なぜなら、金さん、銀さんがそのよい例であろう。歯科以外
の慢性疾患患者、精神病院に入院している患者、自律神経失調者、アトピー、リュウマチ、メニエ
ル氏症、そして、各種の悪性新生物の症状を呈する患者、また、歯科的には自信をもって制作した
総義歯やインプラントの上部構造物、そしてパーマネントレストレインョンetc…が適合しないほ
とんどの患者達の下顎骨は後退位であり、また、踵荷重であり、頸稚は後湾している。これは、咬
合点P1が胸椎の円環に沿って後方または後下方に移動することによって、咬合三角の重心PG1も後
方または後下方に移動(変化)することが演繹される。つまり、常態における基軸である頭位中心
軸とアランの円が、頭頸部、足部、腰部等の外傷、不正咬合(広義な意味ではこれも明らかに外傷
である)等によって、重力場の平衡を失った状態にあるといえる。当然、アポトーンスは加速され
ることであろう。
 なお、人体のC型(Cカーブ)崩壊はPG1の重心後方偏差で解明できたと言うことは、その初発因
子がP1の後下方移動にあるわけだから、人体が病態を呈していくのは咬合崩壊がその主な原因とい
える。また、PG1の後下方移動は、足底重心中心の位置も後方に移動することによって、重力と抗
力による脳内の加圧潤滑も頭位中心軸の位置変動の影響をうけ、難病態に陥りやすい。それは、脳
幹部つまり脳下垂体、視床下部、大脳偏桃核といったところが、正しく重力による加圧潤滑されな
いことによると思われる。外傷や先天性障害や職業病以外に難病態を引き起こすのは、咬合崩壊以
外のなにものでもないという事が、証明されたと言っても過言ではないだろう。
 人類の進化は、RNAからDNAといった原始生命、原生動物、昆虫類の脳、爬虫類の脳、哺乳類の脳、
霊長類の脳、ヒトの脳というぐあいに進化してきましたが、いちばんヒトに近いゴリラやチンパン
ジーでさえも、頸椎は後湾しているのです。
これは、精神サナトリウムに入院している、いわゆるボケ老人や精神病患者とほとんど同じなので
す。また、最近の日本の青年達にも、同じような頸稚の形態がみられます。そういうヒトは、無表
情で下顎が細く(仙骨が下顎と形態が正比例して細くなるのが、オステオパンー医学の世界では知
られている。)後方荷重で種々の慢性疾患を有していることが多い。家庭内暴力、登校拒否の青少
年達のほとんどが、咬合不全や後方荷重、またはその複合を有しているのを、著者等は確認してい
る。
ということは、ヒトはプレヒューマンの形態に回帰していると言えなくもない。もしかすると、人
類は、もうその使命を終えつつあるのかもしれない。あるいは、もうワンランク上の霊性をもつ、
スペシャライズド・ホモサピエンスサピエンスに変化する移行期かもしれない。
 ともあれ、重力場の平衡とヒト直立4円環と、重力円とで著者等が発見した5円環理論は、2つの
数理解析によって追試証明された。ひとつは4つの円の中心に対するベクトル解析であり、いまひ
とつは、直立人体における円弧の力価解析である。力価解析は紙面の都合で次に譲るとして、ベク
トル解析図を掲載しておく。



まず、人体前面の2つの円と後面の2つの円のベクトルを構成する。
つぎに、できあがった2つの平行四辺形から、大平行四辺形をつくり、ベクトルをとると、なんと
頭位中心軸とピタリ一致した。
 また、著者等は病態の重力偏差を元に戻し、年令相応の咬合三角を常態にもどすオステオパンー
の手技医学テクニックや、特殊セファログラムコレクション分析法や、また、その情報を半調節性
咬合器のフラッグに写し取るテクニック等をもっているが、今回は紙面の都合で割愛する。


展  望

 このように、重力場における咬合のもつ意義は、従来の歯科医学のもつコンセプトを大幅に塗り替
えるだけでなく、場の平衡を与えてやれるならば、人類のほとんどの病態の修復、改善をうながすこ
とが期待できる。言いかえるならば、歯科医師こそが、来たるべき新世紀において、人類の心身の
健康と進化発展のイニシアチブを握っているといってもさしつかえあるまい。


文  献

1)山田 武 大山ハルミ:アポトーシスの科学,東京,1994,講談社,27〜54.
2)戸塚 宏:反平等主義,東京,1992,フローラル出版,120〜143.
3)河合雅雄二人類以前の社会学,東京,1990,教育社,  71〜92.
4)中野 昇,中野 達:頸稚の臨床,東京,1989,南江堂,20〜48.
5)山口彦之:生命増殖工学,東京,1991,裳華社,29〜55.
6)星宮 望二生体工学,東京,1990,昭見堂,137〜189.
7)R.M.アレキサンデー,坂本憲一訳:恐竜の力学,東京,1992,地入善館,20〜27.
8)J.A.ウイルか一ソン,赤須孝之訳:登山の医学,東京,1993,東京新聞出版局,114〜135.
9)福増席亭:奇跡の触手療法,東嵐1994,プレジデント社,14〜37.
10)伊藤正男,桑原武夫:最新脳の科学TT,東京,1988,同文書院,693〜716.