咬合の為の現代手技医学


紙上研究発表
咬合のための現代手技医学
中谷 紀之
大阪府歯科医師会 泉佐野・泉南支部泉佐野市開業
Modern Manual Medicine for the Occlusion.
Toshiyuki Nakatani

Abstract.;
It need hardiy be pointed out that the advance of dental science has made the
mitigation of many types of human misery possible to a degree undreamt of a few
centuries ago.
On the other hand.
manual medicine is as old as science and art of medicine itself. In ancient the
use of hands in treatment for injury and disease was practiced already.
Even Hippocrates,the father of modern me dicine, knew how to use manual medicine
procedures.
In the last hundred years a great many investigators have been prompted by their
desire to improve the ancientart of healing; not only dentists but osteopathysts,
Chiropracters, biologists and antholopologists as well. We believe it to be superfluous
to differentiate between the concepts of occlusion and manual medicine.
Indeed, without manual medicine, expressed or implied, our knowledge of dental science
would be friable in the extreme.The fatal barrier to the solution of a medical problem
is to ignore or deny the existence of traditional methods.

keyWords;
Manual Medicine
Osteopathists
Chiropracters
5−3 WAKAMIYACHO IZUMISANOCITY OSAKA 598 JAPAN
PHONE FAX 0724・62・1117


はじめに

 近代科学の一分野でもある歯科医学も大いなる進歩を遂げ、多種多様な人類の様々な疾
病による不幸が、数世紀前には夢想だにされなかった程度にまで軽減されるに至ったこと
はほとんど指摘するまでもない。
 我が国においても、戦後国民皆保険制度が施行されるまでは、腰が90度以上に曲った高
齢者が多勢存在していた。国民皆保険が義歯の装着を促したことにより、頸椎の歪みが必
要以上に進まず、上部頸椎と腰椎との相関性によって(1)、腰の曲がりにストップがか
かった結果であろうと思われる。
 このような事実は、咬合と姿勢との間に関連があることの一つの証左であると考えられ
る。咬合が頸椎や腰仙部そして姿勢にまで影響があったとしても、我々歯科医師の既存の
知識だけでは、それらの歪みの診断、治療、そして確認の方法がなかった。D・S・S(歯
冠外科医師)を標榜している我々は、我々以外の活療技術の獲得が必要となってきたので
ある。全体愈経としての歯科医学を新たに問い直す必要が求められている。
 他方においては、手技医学の古さは科学と同じである。それ自身芸術の医学である。古
代においては、ケガ人や病人に手掌を使った手技医学は熟練していた。近代医学の父ヒポ
クラテスでさえも、手技医学のやり方を識っていた。ここ1世紀の間、極めて多くの研究
者たちは、古い活療法や哲学を改善せんとする熱望に刺激されてきたのだった。それは単
に歯科医師ばかりでなく、鍼灸師、整骨師、医師、建築家、遺伝学者、音楽家を含む芸術
家や哲学者までもがそうであった。我々は咬合と手技医学や伝統医学との概念の間に区別
を設ける事は不必要であると信じる。いかなる問題にせよ、その解決に到命的な障害は、
その伝統的医学や手技医学の存在を無視したり、恐れたり、また、否定したりすることで
ある。


臨床応用

1)伝統医学の和合

 先ず中医学や日本の東洋医学の中に、はたして原理原論が存在しているのであろうか。
 残念ながら西洋医学のように東洋医学理論として体系づけられたものはない。せいぜい
急性病である傷寒の治療法を書いたものぐらいであろう。しかし、ここに2000年の時を超
えて数学者で鍼灸師の入江が世界で初めて先達の原論を、帰納法と公理を駆使して甦らせ
たのである。ただし前提条件が必要で入江式フィンガーテスト(以下FTと称す)(2)が
出来なければ六部定位の診断ができない。大村(3)のO−リングテスト(以下OTと称す)
は術者とクライアントの相対から2人が必要であるが、図1、図2のように、入江FT法は片
手をセンサー、もう一方をテスターとして生体の異常の微小刺激と、微小反応を感知検出
する方法で術者一人で行うものである。図3のように、例えば正常な姿勢の人がいるとす
る。この人が右側の咬合不全から右側の顎関節症を起こし、経筋(4)に異常をきたし、
右側の膀胱経筋に痺がおこりひきつるから、左肩が上り、右肩が下り、脊椎および任脈の
線は左に彎曲する。又、上から見た姿勢は、右の膀胱経筋がひきつるから左肩が前に出て
右肩が後へひかれた姿勢となる。寝た姿勢は左足が長くなり、右足が短くなる。右の骨盤
が上へ引上げられるからである。又、右の膀胱経筋の痺のため、右足が左足に比べて外側
へ倒れる。丹田は左へずれる。これら咬合由来の顎関節症の診断は図4のように全身の体
表から入江六部定位と共に、感知診断治療することができる。



2)手技医学の場合

 手技医学もいわゆる整体やオステオパシスト(整骨師、柔道整復師、接摩マッサージ)
やそしてカイロプラクター(MART、SOT、AKのテクニック)などがあり、やはり、これら
も公理、原理が科学的に納得できるものが少なかったが、アップライドキネジオロジーテ
クニック(以下AKTと称す)と柔整師で物理学者である吉田が、演繹法と公理を駆使とし
て完成させた構造医学が比較的に原理に近いと思われる。AKTのドロップテクニックは神
経根の損傷や切断事故がある危険なテクニックなので省く事にする。AKTは筋肉反射テス
トの代表テクニックのみの紹介に留める。これは大村の0−リングテストと同じで膝の梨
状筋の反射を使った筋肉テストである。(5)AKTは先ずスイッチングといって、胸鎖関節
とへソのあたりを30秒間マッサージを行なって、体の神経系とエネルギーの乱れを整える。
次に梨状筋をインディケーター筋とし使いセラピーロカライゼイション(以下TLと称す)
治療地分析を行なう。
 そしてサブラクセイション(亜脱臼)の場所が判明すると、どの三次元的方向に力を加
えると(チャレンジすると)検査筋が弱くなるか判断し、強くなる方向ヘアジャストする。
図5のような膝の持ち方をして検査する。そのときクライアントは自身の手指を顎関節に
あてTLさせながら、術者はクライアントの膝を手前にひくようにして、そのステッキーな
感覚でもって検査する。これは0−リングのように誰にでもすぐにできるテクニックであ
る。次に構造医学的治療法の一部も紹介しておく。(6)咬合由来生の顎関節症は全て頚
椎症へと移行してゆく。しかし頚椎症は全て顎関筋症ではなく、尾椎由来もあれば外傷由
来もある。舌骨は頚椎3番レベルにあり、甲状軟骨は頚椎4番レベルにある。顎関節の動滑
車である舌骨と同高位にあることで、頚椎前後の力学成分から協調支点の存在が考えられ
る。
そこで舌骨高位であるC3およぴC4レベルを開口制限者で調べてみると、開口制限側のC3、
C4ファセットが開口しようとすると、異常に後方および開口制限側へ突出することが分か
った。
この滑走を防ぐように後方よりサポートした結果、開口制限がかなり緩解することが判明
した。また、頚推の伸展は、C3C4の協調支点を前方へ滑走させる応力を発生させるために、
頭蓋の後方伸展力が強まり閉口に障害がでてくる。
 イ.右開口不全の場合
クライアントに仰臥位をとらせ、術者はクライアントの頭側12時に位置し、右手示指中筋
部で右C3ファセットと接触し、最大開口させつつ面圧(立位時の重力軸線上にかける軸圧)
をかけアジャストする。
 ロ.右閉口不全の場合
同様な位置から右C4ファセットに対して面圧を加える。クライアントは、先に最大開口位
から閉口しようとした瞬間に、やや頚椎を屈曲するようなタイミングでアジャストする。
以上のアジャストが終了した後、マイオセントリックで製作したバイトプレートのソフト
か、熱塑性シリコンマウスピースをその場で製作し、装着したまま就眠させる。
図6は面圧アジャストをおこなっているところである。





おわりに

 多くの手技医学や伝統医学は科学的証明が遅れており、その意味では、入江の言うよう
に未科学の域を脱していないものが多い。しかしながら、その治効性、速効性、安全性が
高いという事実が存在する以上は、完全に論理的な解明がなされる日は遠くないであろう。
最新のバイオメカニクスは、100年前のカパンディのバイオメカニクスをはるかに凌駕し
ており、その物性物理的演繹証明と生理学的演繹証明と、そして伝統的癒経の演繹証明と
が同一であることが、一部の先駆者によって急速に証明されつつある。それは、世紀末に
向かっては一条の光明と成り得るかもしれない。何故なら、来るべき21世紀は、人類にと
っては天国でも冥府でもない実在の癒経者にとっての新たなる創世記となり、ヒトと医業
の関係がカオスからフラクタルへ帰結することを願わずにはおれない。カオスの今は部分
の病しか見えず、部分の邪しか触れられず、真にマントラ(真言)のいう、病人を心眼で
診ることの大切さが今後ますます再確認されることであろう。


文献

1)脇山得行図説AKのテクニック 東京 1987年 エンタープライズ 72
2)入江正臨床東洋医学原論入江FTによる診断と活療 大阪 1990年 入江正 144−152
3)大村恵昭図説バイ・デジタルO−リングテストの実習 東京 1986年 医道の日本社
4)入江正経別・経筋・奇筋・奇経療法 東京 1982年 医道の日本社 127−134
5)脇山得行 図説AKのテクニック 東京 1987年 エンタープライズ 242
6)吉田勧持 構造医学の臨床 東京 1989年 エンタープライズ 11−19